ここに、agrisensor(アグリセンサー)というblogサイトを立ち上げる。もちろんこれは造語である。様々な工業や研究用で使われている高度なセンサー技術を農業に活用していく。これをagrisensor技術と呼ぶこととしたいのだ。
農業の分野は、これから10年くらいのスパンで、ゆっくりと死に向かう。65歳以上の農業人口が大多数を占め、かつ40才未満の新規参入者が毎年1万5千人もいない現状では、そう観測するしかない。しかし、現在40才未満の就農者が大勢を占める10年後からは、これまでの日本農業とは全く違う、新しい農業パラダイムが出現するだろう。その頃には農村は「票田」にはならないため、土地の流動化を停めていた規制の緩和が進み、生産物の流通・販売システムもまた大きく変わっているはずだ。
そんな中で重要になってくるのが、agrisensor技術だと考える。新しいパラダイム上での農業スタイルは、現在よりも一人あたりの管理面積は大きくなり、省力化されていくはずだ。逆に、農家一戸に必要な農機具が全て揃っているというヘビーデューティなスタイルではなく、緩やかな組織体の中で共同利用がなされていくような形になるだろう。そうなると、高度な生産管理技術に加え、きちんとした予測に依る計画的な生産プロジェクトのマネジメント技術がなくてはならないはずだ。その新しい営農スタイルに必要なのが、agrisensor技術ではないだろうか。
これまで個人的な圃場単位での実測が難しかった「微細な環境計測データ」を個人農家が持ち、それを自分の営農スタイルに応じて処理・加工して、自分の営農スケジュールを作っていく。環境変化に応じて、最適な「打つ手」を導き出して実行していく。
実はこうした営農スタイルは農業情報学の分野ではよく整理された絵として頻繁に描かれてきたものだ。しかしこれまで現場では「そんなの必要ない絵空事だ」と言われ続けてきた。そう、これまでは。
今後の日本農業の方向性を考えていくと、agrisensor技術をフル活用したスタイルがようやく現実的なものとして捉えられるようになってくるのではないかと、思う。
さて、このblogは農産物生産・流通コンサルタントである山本謙治がメインに執筆を行い、今後あるべきagrisensor技術についての考察と情報交換を行っていくために構築されたものだ。読んで頂きたいのは、農業生産者や団体・出荷団体・流通業者・販売業者、そしてagrisensor技術に関心を持つ全ての方達だ。スパムや煽り以外の建設的なコメント投稿を大歓迎する。
このblogのスポンサーは、関西の名高い計測・分析機器メーカー「堀場製作所」である。堀場製作所としては、上記視点から次世代の農業現場に投入できるセンサー機器を視野に入れている、ということだ。ご存じだろうが、同社の計測機器はこの国の産業の根幹を支えるメーカ等に多数使われている。その技術を農業分野に振り向けてくれたら、これほどエキサイティングなことはない。一も二もなくこのblog運営を買って出たのには、そういう理由がある。
しかし、だからといってこのblogは堀場製作所の機器を宣伝するためのものではない。そういうつまらない内容であるならば、僕はblog運営をしたくない、ということを伝えて、ご了承いただいている。広く大局的な視点から、今後の農業スタイルを現場サイドと情報交換し、必要とされる技術は何か、をディスカッションしていく場として展開していきたい。従って、様々なメーカの製品について紹介したりもしていく所存だ。
そしてもう一つ。こういう動きをすると、喜ぶのはメーカサイドの人間が多い。単純にビジネスチャンスであるからだ。しかし、よくある構図は、メーカの人間だけが集まってワイワイやるような委員会だったり、研究会だ。そういうものには僕はしたくない。agrisensor技術が活用されるの現場は、圃場、倉庫、選果場、集出荷施設、取引所(市場など)、販売所、物流の現場すべてを含んでいると考えたい。そしてこのblogに集い意見を交わすのは、その現場の人たちをメインとしたい。
本blogではこれ以降、適時agrisensor技術に関するエントリを私が執筆し、読者の意見を問い、ディスカッションをしていくという形をとりたい。その中では、今後必要とする技術そのものに関するアンケート調査なども実行していく。また、環境計測機器を実際に圃場で使って頂くモニター調査もしたいきたい。ぜひ皆さんの積極的な参加をいただきたいと思う。
日本の農業の未来の、ほんの一翼を担うだけのの技術かもしれないが、それを創り出していくプロジェクトを温かく見守って頂きたい。
2005年5月1日 株式会社グッドテーブルズ 山本謙治